厳しい相撲の稽古の内容とは?過酷な力士の修行に迫る

ここ10年ほどの間で大相撲の人気が高まっています。その背景には、「スー女」と呼ばれる女性ファンの増加があります。

女性の方は、力士の力強さやたくましさに惹かれる方が多いのではないでしょうか。

力士は、その力強さやたくましさを身につけるために、厳しい稽古を積み重ねています。

今回は、力士の稽古の内容について、くわしくご紹介したいと思います。

目次

相撲の基礎・基本の稽古

相撲の稽古は主に土俵外と土俵上での2つに分かれます。

土俵外での稽古、つまり基礎・基本の稽古についてみてみましょう。

基礎・基本は相撲で強くなるためには欠かせず、横綱でさえ基礎稽古は引退するまで毎日欠かさずにおこないます。

基礎・基本の稽古①四股

四股は、力士にとって最も基本的な稽古の一つです。

この動作は、片足を高く上げ、その後大きく踏み込むというシンプルですが重要なもの。

この一連の動作は、力士が土俵上でのバランスと安定性を養うのに役立ちます。

また、四股を踏むことで下半身の筋力が強化され、相撲の重要な基盤である強靭な脚力を育成します。

さらに、下半身全体の柔軟性を高める効果もあり、激しい取組の中での怪我の防止にも繋がります。

毎日の四股稽古は、力士の身体能力を高め、土俵での戦いにおいて重要稽古です。

また「大地の邪悪な霊を鎮める」という、相撲の起源にも関わる、儀式としての意味合いを持ちます。

基礎・基本の稽古②てっぽう

てっぽう稽古は、すり足の上半身版ともいえる基本の練習です。

力士は、稽古相手や専用の柱を用いて、肩甲骨の動きを確認しながら左右の手で交互に突っ張りを放ちます。

この稽古により、力士は土俵での激しいぶつかり合いで欠かせない突っ張りや上半身の使い方を養い体に染み込ませます。

一見単純な稽古ですが、土俵上での押し相撲には欠かせない動作であり、力士にとってはとても重要な訓練なのです。

基礎・基本の稽古③股割り

股割りは、力士の柔軟性と下半身の強化に特化した稽古です。

この稽古では、両足を大きく開き、徐々に身体を下げていきます。

股割りによって得られる柔軟性は、怪我の予防につながるだけでなく、土俵上での機動性や反応速度を高めるためにも不可欠です。

股関節の柔軟性は下半身の安定には欠かせない要素であり、土俵上での粘り強さを養うだけでなく、攻撃力を高める効果も期待できる、日々の稽古に欠かせない種目となっています。

基礎・基本の稽古④すり足

すり足は、土俵上での移動技術を磨くための稽古で、足を地面から離さずに素早く移動する技術を身につけます。

すり足は、相手力士に対する安定した姿勢を維持するために不可欠であり、土俵の端での立ち回りや相手の攻撃をかわす際にも重要な役割を果たします。

地面から足を上げるということは、それだけバランスを崩しやすいということでもあります。

地に足を付けて安定感を高めるために、すり足の稽古は欠かせないものなのです。

土俵上の稽古

より実戦に近い形での取るのが土俵上での稽古です。

基礎の稽古はもちろん大切ですが、本番の取組で勝つためには、土俵上での実戦を模した稽古が重要です。

土俵上の稽古には申し合い、三番稽古、ぶつかり稽古、見取り稽古、出稽古、連合稽古などがあります。

土俵上の稽古①申し合い

申し合い稽古は、実際の相撲取り組みを模した稽古です。

力士たちは、本番さながらの環境で相撲を取り合い、実戦での経験を積みます。

この稽古では、対戦相手の技術や戦略に応じて自分の動きを調整することが求められ、技術的な洞察力と反応速度の向上に寄与します。

また、申し合いでは勝ち抜き形式での稽古となっており、勝てば次の相手を指名し取組ができますが、負ければその時点で稽古が終わってしまいます。

つまり、勝てばその分たくさんの稽古を詰むことができ、負ければ稽古量が減ってしまうということです。

そのため、申し合いの稽古では力士たちも本気で取り組まなければなりません。

また、実戦に近い稽古によるプレッシャーに慣れることで、大一番での心理的な強さも養われます。

土俵上の稽古②三番稽古

三番稽古は単に「三番」とも呼ばれ、近い実力同士の相手と連続して取り組む稽古法です。

現在では「三番稽古」は三回ではなく何度も行われます。

この稽古では、力士は相手の技術や癖を瞬時に理解し、対応する戦術を考える必要があります。

持久力と戦略的な思考力が同時に鍛えられるため、三番稽古は力士の成長にとって非常に重要な役割を果たします。

土俵上の稽古③ぶつかり稽古

ぶつかり稽古は、力士がぶつかる側と受ける側に分かれてぶつかり合う稽古です。

基本的には受ける側は実力が上の力士が務めることが多く、いわゆる「胸を借りる」の語源でもあるとされています。

申し合いや三番が終わった最後に行われるこのぶつかり稽古は、何度も行われます。

押し出せなかった場合、すり足をさせられ最後に転がされ、押し出せるまでもう一度ぶつかり稽古をさせられます。

稽古の最後の追い込みとして、攻撃時の押し出すための能力を鍛えるのです。

土俵上の稽古④見取り稽古

見取り稽古では、他の力士の取り組みを観察し、技術や戦略を学びます

他の力士の強みや弱みを理解することで、自分自身の取り組みに活かすのです。

つまり、実力のある力士のスタイルや技を「盗む」ための稽古といえます。

他の力士たちの様々なスタイルや技術を学ぶことで、自身の相撲の引き出しを増やすことができます。

土俵上の稽古⑤出稽古

出稽古は、他の相撲部屋を訪れて行う稽古です。異なる環境や相手との取り組みを通じて、新しい技術や戦略を学びます。

いつもの環境から離れ、異なる場所での新たな刺激を受けることで、力士の成長に大きく貢献します。

土俵上の稽古⑥連合稽古

連合稽古は、複数の相撲部屋が集まって行う大規模な稽古です。

多様な相手との取り組みを通じて、力士はさまざまなスタイルや技術に対応する力を身につけます。

力士が自身の相撲を多角的に評価し、改善する機会が得られるだけでなく、他の相撲部屋の力士から刺激を得られるなどさまざまななメリットがあります。

土俵上での稽古は、力士が実戦に近い環境で技術や精神力を磨くために不可欠です。

日々の厳しい稽古を通じて、力士たちは自身の限界を伸ばし、土俵での勝利を目指して努力を重ねます。

その他の稽古:山稽古

山稽古とは、大相撲の力士が稽古場以外の場所で行う稽古のことです。

通常、相撲の稽古は土俵で行いますが、稽古場が不足していたり、巡業などで土俵が使えなかったりする場合に、山稽古が行われます。

山稽古が行われる場所は、山以外にも、公園や広場、河原など、場所に決まりはありません。

土俵がなくても、力士同士で相撲を取ったり、かけっこや筋トレなどのトレーニングをしたりします。

山稽古は、力士の体力や筋力、動きの軽快さなどを鍛える効果があります。

また、土俵以外の場所で稽古を行うことで、土俵際での詰めや、土俵外の動きなども身につけることができます。

昔は、巡業などで山稽古が行われることが多かったのですが、最近は環境の変化などにより、減少傾向にあります。

しかし、それでも力士たちの体力づくりや、相撲の技術向上のために、重要な役割を果たしています。

以下に、山稽古の具体的な例をいくつか挙げます。

  • 相撲:土俵がなくても、力士同士で相撲を取ることができます。土俵際での詰めや、土俵外の動きなども鍛えることができます。
  • かけっこ:公園や広場などで、かけっこを行います。体力や持久力を鍛えることができます。
  • 筋トレ:公園や広場などで、筋トレを行います。筋力や体幹を鍛えることができます。

山稽古は、力士たちの日々のトレーニングの一部として、重要な役割を果たしています。

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